第1回「夢を持ちなさい」と言われて育った。

私の生まれ育った関西のはじっこの街は、なんの変哲もないし便利なわけでもない片田舎で、地名を言ったところで知っている人はほとんどいない。産業と呼べるものもないベッドタウンだったから、どこの家庭の親もそう言った。夢を持ちなさい。夢に向かって励みなさい、と。

だからか中学時代は、部活動に励む同級生のヒエラルキーが高かった。それは、夢に繋がっているイメージを周囲に持たせたからなんじゃないかって今は思う。

 

夢なんて正直よく分からなかったし、運動も苦手だった私は、高校を卒業するまで帰宅部に6年も所属した。けれどもうちの親はその部活動にはあまり好意的ではなくて褒められることはなかったのだけれど。

私の両親は、凡庸を絵に描いたような夫婦だった。一度、私の地元でドラマの撮影がされたことがあったのだけれど、その時野次馬で見に行った両親が撮影クルーに声をかけられると言う事件が起きた。

けれどもそれは、クルーが彼らを役者と間違えたのではない。

 

「エキストラさんはコッチ入って、撮影始まるから早く」