第4回 部屋探し始まる

そうこうして、晴れて無職放免になった日の昼前、私は職安ではなく大阪にいた。

ヤケッパチだったが、いざ大阪駅に到着すると爽快さと不安で変な汗をかいていた。

3年もブログ上でやりとりしてはいるものの、会うのは初めてだったタネちゃんは、会うまでは緊張感で倒れそうだったが、会ってみるとなんてことはない。ブログの雰囲気そのままの明るい女の子だった。

快く部屋探しにも同行してくれた。

彼女は「オートロック・2階以上」しか書いていない私の手書きメモを元に、仲介業者の営業マンに条件を提示していく。

向きはどっちだとか、近くにスーパーはあるかとか、1Kなら冷蔵庫は廊下に置ける方がいいとか。

「どうして廊下がいいの?」

「寝てるとけっこう冷蔵庫ってうるさいの」

感心しきりだった。

紹介してもらった職場が梅田ということもあり、彼女おすすめの『京橋』に絞って探すことになった。

京橋は何と言っても利便性が高い。JRは環状線片町線・少し歩けば東西線まで使用できるほか、大阪人必須の交通網である地下鉄、鶴見緑地線も網羅している。その上京阪電車まで通っており、大阪市内はもとより京都・神戸へのアクセスも一本なのだ。

一昔前はあまり治安がよくなかったそうだが、最近ではその便利さから人気が急上昇しているんだとか。

しかし、私はその「治安が良くなかった」がどうしても気にかかる。

 

いろいろな条件をしょっぴいても、私が最優先で拘りたかったのがセキュリティ面での安心なのだ。

高校生の頃、帰り道で怖い思いをして以来、私は一人暮らしをする上で防犯にはお金をかけたいと思っていた。

また、私はズボラな割に料理が好きで自炊は絶対にしたい。まな板も置けないキッチンはチョットな・・・。

 

でも、タネちゃんの会社ではアルバイトとして雇われるのだ。

社会保険だって入ってもらえるか怪しいのに住宅手当なんてもちろん出ない。自腹で出せるギリギリの金額は6万5千円くらいだろう。

うーん、と唸って、一人暮らし用の1K・1Rでは、その2点を叶える部屋はなかなか無いんですけどね、と笑った営業の早坂さんはパソコンのモニターを睨む。

実は、正直にいえばこの時、本当は明日職安に行こうと考えていた。もちろん、地元でだ。