第2回 夕飯時の定番

以来、その話は我が家の夕飯時に母が話す定番になった。

同じ話をすり切れるほど聞かされるのも中々苦痛だったが、私はそれよりエキストラ扱いされて喜ぶ母の“小物感”がイヤだった。

でも、私は一度も両親に逆らったことはない。理由は単純で、私は吃音なのだ。

幼い頃からけっこうしっかりとしたドモリがある。それが恥ずかしくて部活動もバイトもしなかった。

私はいつもノートに書き殴るだけだった。嬉しかったことも、悲しかったことも、唇は一文字にぎゅっと閉じてペンを取った。

日記と呼べるほどのものではなかった。だって、紙とペンはわたしの口に過ぎない。最後のページが埋まると生ゴミにこっそり潜ませて捨てた。

 

エキストラの両親から生まれ、さらに吃音を言い訳にして引っ込み思案の私が「夢」なんてたいそうなものを抱くはずもなく、地元で生まれて地元で死んでいく予定だったのだけれど。

 

そんな予定が思いっきり狂ったのは、先月のことだ。